はい。お疲れ。
ありがとうございましたー。僕の面接どうでしたか?
受け答えやルックス面は特に問題なし。
おっしゃー。
選考中盤くらいまでは上手くいくと思うね。
中盤まで?
企業によっては、終盤で落ちるかもね。
えぇ!?
ゆっくり霊夢はFランク大学の就職課に就職したようです【第56話】
※このサイトの記事は【Fラン大学就職チャンネル】の動画から引用・参考にして作られています。
企業理解が浅い。志望動機も、「企業理念に共感した、従業員の雰囲気が良かった。」なんてことばっか言ってるし。
だってこの業界、どこの企業も同じようなことやってて、全然違いが分からないんですよ!結局、企業理念とか、従業員の雰囲気とか、そういうのを語るしかないんです。
確かにそういうケースもあるんだけど、ちゃんと調べれば明確に差別化されてることもあるよ。
えー?
まず、その企業のビジネスモデルを理解することから始めたら?分かりやすく言えば、どうやって金を稼いでいるのか。
いやいや、それくらい分かってますよ。僕は飲食業界を志望していますから、そこは凄く単純です。どこの飲食店も、食べ物を用意して、お客さんに売って金を稼いでいます。
同じ飲食業界の企業でも、金の稼ぎ方まで同じとは限らないよ。
どういうことですか?
君も利用しているだろうから、喫茶店を例にしようか。その中でも、スターバックスとコメダ珈琲店を比較する。
比較って…。どっちも、コーヒーとパン売ってるだけで同じなんじゃないんですか?
売ってる物は似てるけど、金の稼ぎ方が全然違う。スタバのお客さんって誰だと思う?
そりゃ、僕たちみたいな個人ですよ…。
そう。売上のほとんどは、スタバが運営している店舗が稼いでる。じゃあコメダは?
だから、スタバと同じじゃ…。
違う。
えっ…。
㈱コメダは直営店をほとんど持っていない。コメダ珈琲店は、2017年7月時点で国内に747店舗ある。だけど、そのうち直営店は13店舗しかない。店舗の約98%がフランチャイズなんだよ。
直営?フランチャイズ?
直営店っていうのは、自社で運営している店舗。フランチャイズ店っていうのは、運営は別会社。フランチャイズ本部がブランドとノウハウを提供しているだけ。飲食だけじゃなくて、コンビニなんかの小売もフランチャイズが多いよ。
へぇ…。
つまり、コメダそのものは、個人顧客をほとんど相手にしていない。「コメダ珈琲店」のフランチャイズ加盟店を相手にビジネスしてる。
あーなるほど。同じ業界ですけど、ポジションが違うんですね。
そういうこと。
でも、だから何なんです?
それを説明するために、今度は両社の決算を見てみる。まずスタバ。スタバは2015年に上場廃止しているから、公開されている通期決算の中で最新の2014年3月期決算だと、売上高が約1,256億円。営業利益が約109億円。
はぁ…。
…。売上高は分かる?
わ、分かりますよ!企業が物を売ったりして得たお金の合計額ですよね?
まぁ大体そんな感じ。本業で得た収益の総額ね。売上高は経費を差し引く前の収益だから、そこから本業にかかった経費を差し引いて残るのが営業利益。これが本業で稼いだ利益になる。売上高がいくらあっても、利益が出なければ営利企業としては意味が無い。だから、売上高のうち何%が利益として残るかが重要とされていて、それを示す指標の1つが「売上高営業利益率」。計算式は、営業利益÷売上高×100(%)。
…。
…。分かりやすく言えば、その企業が本業でどれだけ効率的に儲けているかを示す指標ってこと。
あ、ああ…。何となく分かります…。
何となく分かればいいよ。スタバの2014年3月期の売上高営業利益率は約8.7%。直近3年で大体7~8%くらい。大体毎年こんな感じだね。
ちょっとまだ話が見えないんですけど…。
一方でコメダの決算。最新の2017年2月期決算だと、売上高営業利益率28.6%なんだよね。
えぇ!?全然違うじゃないですか!
コメダの直近3年の売上高営業利益率は大体30%前後だから、一過性の結果じゃなくて、毎年それくらい効率的に稼いでる。
同じ喫茶店なのに、なんでそんなに利益率が違うんですか?
それがビジネスモデルの違いだよ。これ見て。
…これは?
これはコメダの決算資料の一部にちょっと手を加えた図。コメダのビジネスモデルを図解している。赤枠で囲っているのが「お客様」。つまり、パンやコーヒーを購入する俺達みたいな個人客。青枠がコメダの本部。赤枠のお客様と青枠のコメダ本部の間にあるの緑枠が店舗。店舗は、フランチャイズ加盟店と、コメダが運営している直営店の2つに分かれてる。
はい。
コメダ本部がフランチャイズ加盟店に行っているのは、顧客に提供するコーヒーやパンの卸売りと、運営指導、店舗設計、修繕など。それによって、卸売り代金やロイヤリティ収入などを得ているわけ。
ロイヤリティ?
フランチャイズ加盟店から、本部が受け取る金のこと。コメダの場合、1座席あたり月1,500円のロイヤリティを得てる。
え、そうなんですか?
これがコメダの売上高の内訳。コメダの直営店売上高は、売上高全体の6%くらいに過ぎない。一方で、加盟店への卸売は売上高全体の約68%を占めてる。その他の収益も、多くは加盟店から得ている。
なるほど…。
一方でスタバは、売上の多くを直営店が稼いでいる。その分、コメダと比べて店舗運営コストの負担が重くて、利益率が低くなるってわけ。リクナビに書いてある情報だと、2016年6月30日時点で、スタバは国内に1,198店舗。そのうち、ライセンス(フランチャイズ)店が68店舗。つまり、スタバの店舗の95%くらいは直営店ってこと。コメダとは逆だね。この図で言えば、黒く囲っている領域がスタバのメインビジネス。黄色く囲っている領域がコメダのメインビジネス。ね。全然やってること違うでしょ。
で、ですね…。
利益率という観点だと、黒枠より黄色枠の領域が優れているね。
何か、コメダはズルくないですか?
ビジネスにズルいとかズルくないとかないよ。そういう立場を作った企業が強いってだけで。それに、直営もフランチャイズも一長一短あるよ。例えば、度々ニュースとかにもなるけど、フランチャイズ加盟店が問題起こしたら本部に責任が無くても話題になるし、それでブランドに傷がつくこともあるでしょ。運営しているのが別会社だから、本部が徹底的に管理することも出来ないし。
なるほど。それはそれでリスクあるんですね。
俺が言いたいのは、どっちが優れているかどうかじゃないんだよね。一見同じ業界で、同じ物を売ってるように見えても、ビジネスモデルが違えば、稼ぎ方も抱えてるリスクも全然違うってこと。企業のホームページに大きく書いてあるアピールとか、エンドユーザーに提供している商品・サービスを調べたりしただけじゃ、企業分析として不十分。ビジネスモデルを頭に入れておかないと、面接でズレたことを言ってしまう確率は上がると思うね。さっきの君の模擬面接みたいにね。
そ、そうですね。勉強不足でした。せ、せっかくだしスタバ受けようかな…。
スタバは18卒の新卒採用締め切ってるよ。
…。
続く。
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